2015年羊年の版画

2015年羊年の版画では、

<幼児=スチレン版画> スチレンボード(食品トレーの素材)に 釘、フォーク、へら、ドライバー、肉たたき などの様々な道具でキズをつけます。羊を描いたり、雪や雨や風を描いたりするわけです。スチレンボードはまっすぐに線がひけなかったり、強くひっかくと穴が空いたりします。気を付けないとまっぷたつに折れてしまうことも…子ども達は慎重にでもだんだん大胆に楽しく描いて(ひっかいたりたたいたりおしたりして)いました!

できたら、その上に黒の版画インクをローラーでたっぷりぬりつけます。そして用意しておいた紙を置き、ばれんで摺りとりました。色がついている作品は、紙の方にカラーコンテやえのぐであらかじめ色をつけておきました。中には、薄めの白い和紙に摺りとった後、裏からえのぐで、白いところをねらって着色(裏彩色)した作品もあります。

<小学1年生=石膏版画> 羊をテーマに下絵を考えます。画用紙に版と同じ大きさの枠をとり、その中に描きます。彫刻刀で彫らねばならないから、細かすぎる表現をさけて羊を中心にシンプルな線で描き、まわりの景色やえさなどもいれて、最後に名前も描き込みます。それをトレーシングペーパーに丁寧に写し取ります。石膏版にカーボン紙をひき、写したトレーシングペーパーを裏返して(ここでよくミスがおきます)合わせ、裏返った下絵をボールペンで再び写していきます。そうすれば、石膏版に裏返った下絵が正確に転写されているのです。ここへ来てやっと彫りにかかれます。1年生は初めて彫刻刀を使います。刀の名前から覚えて、彫る方向、彫る角度、手を置く位置、また刀によって彫られた跡に違いがあること=刀の違いで味わいが変わってくること を学びます。そのため、たいへんやわらかくそして割れにくい特殊加工された石膏版を使っています。石膏版の裏にはたくさんの練習の跡がみられます。裏返った下絵に沿って彫っていくのですが、『白くしたいところを彫る』を合言葉に、『彫り残す大事な線』もみきわめながら、ゆっくり進めていきます。ところが、あっという間に慣れて、どしどし彫り過ぎたり、『手を置く位置に注意!』を忘れて

指を切る子もでてきます。でも、みんなとても楽しいらしく、そこまで彫らなくても…というくらい、彫りまくっていました。摺りは幼児と同じです。

 

<小学2年生=木版画>テーマが羊なのは同じですが、1年生と違うのは、いよいよ本格的な木の板を使うことです。ある意味2年生が一番苦労するかもしれません。まだ手や指の力が弱い子も多く、彫刻刀にも不慣れで、初めての木を彫るからです。できるだけやわらかい木の板を用意し、彫刻刀もよく切れるものをそろえてあります。さらに今年は実験用の小さな木の板を渡し、それを彫って彫刻刀の種類による彫り味の違いを体験してから、彫りに入りました。そのため、羊のやわらかい毛の感じを出すにはどの刀がふさわしいか、細くこまかなところはどの刀がうまくいくか、自分のすきな刀はどれか、などを自分で考えてすすめていくいい手がかりとなっていました。下絵→トレース→カーボンの過程は1年生と同じです。作品サイズが3年生以上と同じで大きいため、羊の構図に大胆なデザイン性を発揮する子も多く、大変面白い作品となっています。実は、羊は干支のなかでも、子どもは見た事がなかったりしてイメージしにくく、また逆にふわふわの雲のようだといった固定概念も強すぎて、果たして子ども達からどれだけ発想が引き出せるか、大人達は大変心配でしたが、予想を遥かに超えて、ユニークな羊が次々あらわれ、驚かされまた嬉しかったです。

<小学3年生〜中学生=一版多色刷り木版>この学年からは、技法ががらりと変わります。

テーマは歴史的建造物、好きな建物、自分が改造した建物、羊などになっています。

下絵→トレース→カーボンの過程は同じですが、彫りはすべて線彫りで、輪郭線を追うようなイメージで彫ります。摺りに入ると、まず版に黒い紙を一辺で固定します。この黒い紙に作品が摺り上がっていきます。版の上にえのぐで色をすこしづつ置いていき、先程の黒い紙をずらさないように版にのせ、ばれんでそのえのぐを摺りとっていくのです。その作業の繰り返しで、黒い紙に色が摺り重なり、彫った輪郭線などにはえのぐが入らず、黒く残ります。えのぐの溶き加減で、摺りが変わるので、一番きれいに摺れるえのぐの濃さをみつけていくのがポイントとなります。これも大変根気が必要となる仕事です。黒い紙に映えるように、金や銀の色もつかってみました。